[Kaiband]レコード盤ガイド

1974年〜1990年にかけて製造された甲斐バンドのレコード盤について解説しています。

7シ02「裏切りの街角/薔薇色の人生」

<裏切りの街角/薔薇色の人生>
発売日 1975年6月5日

「九州最後のスーパー・スター」という肩書きを提げて「バス通り」でデビューした甲斐バンドでしたが、チャートの最高位が65位という意外な結果となり、甲斐バンドはデパートの屋上で歌うなどなりふり構わない姿勢で市場に挑みました。またこの当時はかなりの頻度でテレビの仕事をしていたそうです。後に甲斐バンドはテレビと距離を置くことになりますが、この頃の痛い経験がそうさせたようです。
ただ、これらの努力の結果は徐々に現れ始め、発売から4ヶ月経った10月にはチャート7位を記録するなど彼らにとっては初めての全国的な「ブレイク」を果たすことになりました。
レコード収集的には「徐々に火がついた」というのは結構厄介です。というのも売れ始めると次から次へと追加でレコードがプレスされるため、レイト盤の数が膨大になっているのです。そのため、音のいい初回盤に出会う確率が低くなってきます。

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非常に汚れやすいジャケットのため、シミのついた個体が多く、状態の良いものを見つける方が難しいです。

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甲斐バンドの英語表記に特徴があり、KAI-BANDという具合に KAIとBANDの間に-が入っています。

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定価は¥500です。CSは「EMIリミテッド」です。
<75年9月盤>
ETP-20137-A 2S 10 〄 5-9
ETP-20137-B 1S 14 〄
チャート最高位の7位を獲得した10月に店頭に並んだと思われる9月プレス盤を紹介します。
初盤は発売日前月プレスの5-5です。最初のプレスから4ヶ月遅れたレイトプレスです。僕が所有した盤の中ではこれが最もスタンパー番号が若く、かつジャケットの状態がいい(他の個体に比べていいという意味です。実際には汚れが見られます)盤となります。
このシングル盤については、ファーストプレスを求めるというのも勿論アリですが、最優先したいのがジャケットの保存状態です。これまで数多くの盤を見てきましたが、ジャケットのキレイな個体が圧倒的に少なく、その多くは黄色いシミが付いていました。これからもジャケットのキレイな初盤を探す旅を続けます。

12ア01「らいむらいと」

<らいむらいと>1974年12月20日発売

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甲斐バンドのデビューアルバム「らいむらいと」は74年の8月26日から10月21日までの間にレコーディングされました。

<収録曲A面>

1 あの頃

2 No.1のバラード

3 悪魔に狂って

4 恋時雨

5 週末

6 バス通り

<収録曲B面>

1 魔女の季節

2 放課後の並木道

3 アップル・パイ

4 思春期

5 吟遊詩人の唄

ここに収録されている曲はB2「放課後の並木道」を除いて、レコーディングの途中で開催された九州での「出発コンサート」でも演奏されています。

「らいむらいと」は帯が途中で変更されています。

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向かって右がオリジナルの帯で、左が変更後の帯となります。

当然オリジナルの帯がついた盤の人気は高く、中古市場においても価格が高騰しています。

帯が変更になった時期ははっきりしていませんが、少なくとも77年の7月には変更となっています。(これは調べた盤の枚数が少ないためで、これより早く変更になった可能性は大いにあります)

オリジナル盤とレイトを外観から見分ける方法は帯以外に見当たりませんが、ジャケット裏面の左下にあるMADE IN JAPANに続くマルIで判断できるかも知れません。f:id:kaiband:20210407114800j:plain

上がレイトで下がオリジナルです。マルIのマルの輪郭がかなりハッキリと印刷されています。レイトはこの部分がかなり薄くなっています。

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インサートはオリジナルもレイトも全く同じです。

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ジャケットの紙質はレイトの方がしっかりとしています。

続いて送り溝について説明します。

<オリジナル盤>

ETP-72021-A 2S 5 〄4-ZW

ETP-72021-B 2S 3 〄

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マト両面2S、マザー両面1、スタンパーA面5、B面3となっています。マト1Sも存在するかも知れませんが、まだ見たことはありません。

PMは74年12月のプレスを示しています。アルバムの発売日が12月20日ですから前月の11月にプレスされた盤(4-Y)が初盤ということになります。

ただし、不思議なこともあります。手持ちの盤には最初のオーナーが購入日を書き込んでいます。それによると「74年12月20日」と記されており、購入日が正しいとすると、発売日にこの盤を購入したことになります。発売日に店頭に並んだ盤の中にPM4-YとPM4-Zが混在していた可能性も否定できませんし、そもそも4-Yは存在しないのかも知れません。

4-ZWのWについては東芝の川口工場を示すという説が有力です。御殿場工場でのプレスと区別するために刻印されたものではないでしょうか。

続いて再発盤についていくつか紹介します。これ以外にも再発された可能性がありますが、こちらで確認できたものを紹介することにします。

<77年再発盤>

ETP-72021-A 2S 10 〄 7-7G9

ETP-72021-B 2S 21 〄

77年の7月にプレスされた後、9月にも追加でプレスされています。77年の夏から秋にかけて行われたツアーに伴った再発ではないかと思われます。

スタンパー番号が少し進んでいますが、オリジナル盤の発売から3年近く経っていることを考えると、思ったより進んでいないと考えた方がいいのかも知れません。

PMのGについては、オリジナル盤で見られたWと同じように川口工場でのプレスだと思われます。(K、W、Gが川口工場を示すと考えられています)

<79年再発盤>

ETP-72021-A 2S 28 〄 9-Y

ETP-72021-B 3S2 4 〄

79年11月プレスの盤です。79年の年末と言えば、伝説の武道館公演(後にライブアルバム「100万$ナイト」としてリリース)を控えており、当然ながらプロモーションに力が入っていた時期の再発でしょう。

B面のスタンパーが進んでいたこともあり、あらたにラッカーがカットされ3Sとなっています。

<雑記>

「らいむらいと」は、帯の違いで価格に大きな開きがあります。オリジナル帯の場合、中心となる価格帯は¥3500〜¥4000です。これでもかなり高い印象ですが、オリジナル帯だからといって必ずしも初盤(ファーストプレス)に出会えるとは限りません。(おそらく初盤PMは4-Yです。)そこで見本盤を買えばいいじゃないかということになるのですが、こちらの現在の相場は軽く¥10000を超えている状況です。ここ数年注視していますが、価格は下がるどころか上がり続けています。もちろんオリジナル帯に拘らなければ¥100〜¥500で入手することも可能です。



7シ01「バス通り/魔女の季節」

<バス通り/魔女の季節>

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甲斐バンドのデビューシングル盤は1974年11月4日に発売されました。

詳しいレコーディングの様子は不明ですが、74年の8月31日に福岡電気ホールで開催された「出発コンサート」をはさみ、8月26日〜10月21日にデビューアルバム「らいむらいと」のレコーディングを終えています。

ジャケット裏面に記載されている問い合わせ先が「シンコーミュージック」となっています。甲斐バンドのメンバーは、デビューにあたり「シンコーミュージック」の社員として契約したとのことです。

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CSは通称「EMIリミテッド」と呼ばれているものです。時代によってCSのデザインは変わっていきますが、「バス通り」に関しては「EMIリミテッド」以外のCSを見かけたことはありません。(もちろん見たことがないだけで存在するかも知れません)

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リムの部分に印刷されたマークは●が3つのタイプ(● ● ●)になっています。こちらも時代によって★が3つのタイプ(★★★)が見られますが、「バス通り」に関しては、やはり●●●以外見たことはありません。

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価格は¥500となっています。

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送り溝の情報は

ETP-20071-A 1S 1 〄 4-X

ETP-20071-B 1S 2

となっています。

ラッカー番号を示すマトは両面1S、マザーは表記なしのため両面1、スタンパー番号はA面1、B面2ということで、極めて初期にプレスされた盤であることがわかります。

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そしてPMは4-X(74年の10月プレス)。発売日が11月4日だから、その前月プレスを示すPM4-Xの盤がファーストプレスということになります。

「バス通り」の見本盤は通常の白レーベルの他に、「九州最後のスーパー・スター」と書かれたものが存在します。私自身はオークションで1度見つけて入札し他ことがありますが、落とすことができませんでした。それ以降は同じ見本盤を見かけることもなくなりました。


<プロモーションに使用されたコピー>

あくなき音楽への情熱と意欲によって

深く見事に描く、そのサウンド

あまりにも強靭な甲斐・パワー

いま この世界に熱風を送りこむ



東芝盤の送り溝の読み方


<お願い>

送り溝につきましては、Twitterを中心に多くの方のご協力によって、事実→仮説→検証という形で研究を進めています。

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<基本的な送り溝のパターン>

ETP-10700-A 1S2  8 〄 0-3T
ETP-10700-B 1S2 11 〄

ETP-10700がレコードの規格番号を示しています。

1S2は、最初の1Sがラッカー番号を示し、続く2がマザー番号を示しています。

その後ろの8や11はスタンパー番号を示しています。

マザー番号が1の場合は、数字での表記は行わず1Sのみとなります。つまり1S1という表記はありません。

また、海外でカッティングを行い、原盤を日本に持ち帰った場合はSではなくL表記になります。

〄に続く0-3TはPMと呼ばれる製造年月を示す記号です。

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0-3Tの場合80年3月プレス(製造)を示します。通常は0-3のように表記されますが、東芝の自社工場以外でプレスされた場合には工場を示す記号が続きます。Tは東洋化成の工場を示しています。

以下、読み方をまとめておきます。

<製造年の読み方>
0 80年
1 81年
2 82年
3 83年
4 74年または84年
5 75年または85年
6 76年または86年
7 77年または87年
8 78年または88年
9 79年または89年

<製造月の読み方>
1 1月
2 2月
3 3月
4 4月
5 5月
6 6月
7 7月
8 8月
9 9月
X 10月
Y 11月
Z 12月

<PMに続く記号の読み方>
T 東洋化成
KやWやG 東芝川口工場(確証はありませんが、そう考えています)

<マトSに続くMについて>
稀に1SMのような形でSの後ろにMがつくことがあります。これに関してはコピーシェルではないかと考え、現在も調査を継続しています。